出来ないなんてことはない…
一週間後、ジェラルドから連絡があった。
「やはり、記録が出てこない。僕は21kmのランをしていないことになっている。頑張ったことがムダになってしまった。がっかりだ。
もう、勝負はついたし今週のレースは君は休めるね。
来月のシリーズ戦はやる気が失せてしまった。言い忘れたけど、1戦目で優勝したルイージは素晴らしいランナーだよ。気持ちがとても強いのだ。
watanabe、お互い本当によくやったよね。ユタへのスロットは君のものだ。」
「とても残念だよ。君のレース結果が見られないから変だなと思ってたんだ。なにか面倒なことが起きたのだろうかと心配した。21km走った記録が出ないのだから悔しいのはよく分かる。」
「ジェラルド、君はとても強い人間だと聞いている。コナでも入賞したらしいね。すごいことだ。僕は常に君を追いかける立場だ。もう次のレースの準備はしている。でも、君が出ないなら、どうしようかな。」
「次のレースか…。トレーニング代わりとしてやるのもいいね。去年コナに行ったけど、あそこは特別なところだ。気持ちもタフさが求められた。」
「誰もがあこがれるコナだね。いつか行ってみたい。」
「間違いなくその日は来るよ。僕は平均的な人間だけど行くことが出来た。夢見よう。出来ない事なんてない。必ず叶うはず。」
「いつかレースで会いたい。そして勝負したい。その日まで頑張って練習を続けるよ。そんなことを考えるとやる気が出る。次のシリーズ頑張ってほしい。」
コメントを打ちながら、ジェラルドのおかれた状況への同情と、レースを続ける緊張感から解放される安堵感とが入り交じった。
彼への慰めと、お互いのこれからの、いつか必ず出会えるであろう期待と、ゴール後共に健闘をたたえ合う姿が、私の新たなモチベーションになり始めた。